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言語とは引用のシステム »

『砂の本』ボルヘス/集英社『砂の本』ボルヘス/集英社文庫Collected Fictions by Jorge Luis Borges / Penguin Classics
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「もはや、われわれには引用しかないのです。言語とは、引用のシステムにほかなりません。」

(『砂の本』「疲れた男のユートピア」ボルヘス 篠田一士 訳)

There is nothing but quotations left for us. Our language is a system of quotations.

( A WEARY MAN’S UTOPIA by Jorge Luis Borges. Translated by Andrew Hurley.)

読書について──ある年老いた男の話。

「きみにはこんな経験がないかね? 何かを考えたり書こうとしたりするとすぐに、それについて最適な言葉を記した誰かの書物が頭に思い浮かぶのだ。しかしいかんせん、うろ覚えではっきりとは思い出せない。確認する必要が生じる──そう、本当に素晴らしい言葉なら、正確に引用しなければならないからな。そこで、その本を探して書棚を漁り、なければ図書館に足を運び、それでも駄目なら書店を梯子したりする。そうやって苦労して見つけた本を繙き、該当箇所を確認するだけのつもりが、読み始め、思わずのめりこんでゆく。そしてようやく読み終えた頃には既に、最初に考えていた、あるいは書きつけようとしていた何かのことなど、もはやどうでもよくなっているか、すっかり忘れてしまっているのだ。しかもその書物を読んだことによって、また別の気がかりが始まったことに気付く。だがそれも当然だろう、本を一冊読むためには、それなりの時間と思考を必要とするものなのだから。ある程度時間が経てば、興味の対象がどんどん変化し移り変わってもおかしくあるまい? だがね、そうやってわれわれは人生の時間を失ってしまうものなのだよ。移り気な思考は、結局、何も考えなかったことに等しいのだ」

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読書とは »

 読書とは、肉体を持っていては体験しえないような体験をすることだ。

 読者は、透明人間となって主人公に付き従い、主人公とともに語られる価値のある体験をする。異質な時を過ごし、普段の自分とはまるっきり縁のない異質な思考をする。ストーリーを思考し、ディテールを思考し、連想や脱線の楽しみさえも思考する。

Tail-Lagoon @ 10:20   |   PageUp

SF作家 »

 世界の成り立ち・仕組みに対する絶大な好奇心。その好奇心を真面目に追求すれば科学者になる。しかし学問というのはとてもまだるっこしい。こつこつと実験だの検証だのに費やし、地道な積み重ねを必要とする。それはそれで尊敬しうる立派な仕事ではあるが、しかしどうも自分には気長すぎる。どんなにがんばっても、もしかしたら知りたいことの半分も解明できずに一生を終えるかもしれない。
 などと考えるせっかちな人間がSF作家になるのじゃなかろうか。
 科学では未だ解らないことを、空想で補う。想像力を駆使して世界の仕組み(理論)を勝手に再構築する。もちろん、そのような思いつきの理論など間違っている公算は大である。しかし、問題は正しいか間違っているかではなく、楽しいかどうかなのだ。答が合っていようがいまいが、そんなことはどうでもいい。それらしい答を導き出すためにあれこれ思案することが楽しいのだ。フィクションとは、そういう楽しさなのだ。だからこそ、世界の仕組みは奇想天外であればあるほど面白い。更に、その奇想天外な理論にいかにももっともらしい理屈をつけ、さも有り得ることのように説明できれば、なお面白い。よくもまあこんな屁理屈をひねくり出したものだと人に思わせられれば最高である。嘘八百で人を騙して納得させてしまうのはたまらない快感だ。SF作家とはつまり稀代の大嘘つき・詐欺師・ペテン師の類なのだ。ただし、それで人から何かを奪ったりはしない。むしろ希有壮大な法螺話で、人に楽しい時間を与えることこそ本懐だ、と考えているに違いない。
 (バリントン・ベイリー『禅銃(ゼン・ガン)』を読みながら思ったこと)

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