2007/04/26(木)
「ヴィリエ・ド・リラダンという人は、絶えず金に困っている割にはひどく現実的なところがあって、たんまり遺産を相続するはずの女性をものにしようというのでイギリスに渡ってきた。目的達成のためにパリの結婚仲買業者が、毛皮の外套、目覚ましつきの懐中時計、新しい入れ歯一式を支度してくれたが、その代金は遺産つき女性の持参金が入り次第、支払うことになっていた。ところが、万事に途中でつまずくのが常習のヴィリエは、今度も求愛作戦でへまをやらかした。遺産つき女性には肘鉄をくらうし、結婚仲買人には外套と時計を返せと迫られるしで、哀れ、ふられっぱなしの求婚者は、口のなかは入れ歯でいっぱい、懐のなかには一文もなしで、ロンドンをさまよう身になったのである。」
(『フロベールの鸚鵡』 ジュリアン・バーンズ 斎藤昌三 訳)
かの奇作『未来のイヴ』の作者が、こんなトンマだったとはね。だが却って親近感が湧くというものだ。むしろ作品よりも実生活のほうが面白いと言ったら、さすがに作家に対する冒涜となってしまうだろうが、作品は作品である種の古典的価値を既に得ているのだから、作家についてもこういうオマケのエピソードがあるなら、それはそれでいいじゃないか。
それにしても「結婚仲買業者」とはどういうものか? 「仲介」ではなくて「仲買」なのだ。2箇所も使用されているのだからまさか誤植というわけではないだろう。つまり、結婚を商品のように売買するブローカーがいたってことか?
Filed under: Short Quote | タグ: バーンズ, リラダン
Tail-Lagoon @ 15:00
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