‘星野道夫’タグの記事

星野道夫の言葉の力 »

『ノーザンライツ』星野道夫/新潮社
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星野道夫『ノーザンライツ (Northern Lights)』

(1997-08-06)

 もうすぐ星野道夫氏の一周忌がやって来る。長かったような、早かったような。ぼくなりに氏の逝去を悲しんだ一年だった。それにしても、その著書を通してしか知らない男の死を、単なる一読者でしかないはずの自分がなぜこうも悼み続けるか。今までこのような経験はなかったのに。これこそたぶん、星野道夫の言葉が持つ力なのだと思う。彼の文章の中にはいつでも優しい笑顔をした等身大の男の姿が見える。ひどく近しい場所、まるですぐそばに彼が立っているように。勿論、星野氏は写真家であり、彼の写真集はどれも見る者に深く感銘を与えずにはおかないのだけれど、それでも、ぼくが写真しか見たことがなかったならば、それほど影響はなかったと思う。写真もすばらしいけれど、それと同じくらいに大きいのは、やはり彼の言葉の力なのだ。

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新しい神話を手にする時 »

『ナヌークの贈り物』星野道夫/小学館
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星野道夫『ナヌークの贈り物』

 いつかあなたはナヌークに出会うかもしれない。
 ナヌークに出会った者は幸せだ。
 それは大地の一員として認められることだから。
 あなたがたった一人ではなく、たくさんの命とつながっているのだということを知ることだから。

 子供向けに作られた写真絵本、易しい文章で、量も少ない。にもかかわらず、この一冊の絵本の中には星野道夫の核が凝縮されている。素晴らしい写真と簡単な文章の中に込められた思いは、遙かに奥が深いのである。

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遠くを見つめるための目 あるいはもう一つの時間への瞬間移動装置 »

『旅をする木』星野道夫/文藝春秋
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星野道夫『旅をする木』

(1996/10〜11)

 『旅をする木』を読んだ。星野道夫という人の書いた文章を読むのはこれが初めて。 僕はつい最近、池澤夏樹『未来圏からの風』のなかで星野道夫というカメラマンの存在を知った。アラスカに魅せられ、アラスカに住み、アラスカの自然を追い続けた人。すでに過去形になってしまうのが非常につらい。この人の名を知って、本も出していると聞いて、これはいずれ是非読んでみたいと思っていた矢先のことだったので、新聞で事故を知ったときは正直言ってかなりショックだった。以来、心の奥にこの人のことが引っかかって、日常ふとぼんやりしたときなどに星野氏の名前が頭に浮かんでくるのをどうすることもできなくなっていた。池澤氏の本の中でしか知らない人のことが、どうしてこれほど気になるのか、僕は自分でもそのことがとても不思議だった。ただ、氏のことを考えている時、いつも自分の中で何か声が聞こえていた。その何かの声が、この本を読み終えたことでようやく、少しずつ形になってきた。命は有限である。おまえはその有限な命をどう生きるのだ。声はそう言っており、その問いかけが、自分の中でずっと続けられている。星野氏の親友が亡くなったときの話が、『歳月』という題で書かれている。星野氏は親友の死を悲しみ、いろんなことを考え、そして最後に自分が今生きていることをまざまざと実感する。自分の生きてゆくその生き方をはっきりと確信する。〈自分の好きなことをやっていこう〉結局誰にとっても、結論はこれしかない。ただ、そう理解することはできても、そう生られる人はやはり少ない。

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