2009/10/27(火)
O God, I could be bounded in a nut shell and count myself a king of infinite space, were it not that I have bad dreams.
なにを言う! このハムレット、たとえ胡桃の殻のなかに閉じこめられていようとも、無限の天地を領する王者のつもりになれる男だ。悪い夢さえ見なければな。
(福田恆存 訳)
なにを言う、このおれはたとえクルミの殻に閉じこめられようと、無限の宇宙を支配する王者と思いこめる男だ、悪い夢さえ見なければ。
(小田島雄志 訳)
(『ハムレット』第2幕第2場 ハムレットの台詞)
ところで、胡桃は人間の脳髄と形状が似ている(16世紀のエピステーメー「相似」により、胡桃は頭部の治療に用いられたと、フーコーが報告している)。ぼくらは脳という胡桃の小さな殻の中に閉じ込めれているが、しかしこの胡桃はまた無限の宇宙をも内包しているのだ。
ついでに書いておけば、ハムレットのこの台詞は、”To be, or not to be…” 同様に、かなり有名なものらしく、様々なところで引用されているのを見かけた気がする。正確なところは全く覚えていないのだが……。
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Tail-Lagoon @ 23:23
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2009/10/09(金)
頭のなかにあることが、言葉を伴わない形状や色、質感と化す夢のなかであれば、アイザックはそのものの正体をよく理解できるのだった。
夢のなかで、惑星や生物はとりとめのない思考のように姿を現わし、無視されるか記憶にとどまるかしたあと、思考と同じように展開していった。眠っている彼の心は、宇宙に似た活動をしていたのだが──ほかにどんな活動ができよう?(『無限記憶』 R・C・ウィルスン 茂木健 訳)
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Tail-Lagoon @ 23:15
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2009/09/13(日)
ムウサ(詩歌女神:ミューズ)の言葉
私たちは たくさんの真実に似た虚偽(いつわり)を話すことができます
けれども 私たちは その気になれば 真実を宣べることもできるのです(『神統記』 ヘシオドス 廣川洋一 訳)
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Tail-Lagoon @ 00:00
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2009/09/07(月)
もちろん、古くからの誤った認識を捨て去って、新しい考えを受けいれるのは、決して容易ではない。ガリレオがピサの斜塔は振り子であることを証明したとき、科学者たちは彼を痛烈に非難した。人類の祖先はビーグル犬だというダーウィンの革命的な新説にも、科学者たちは嘲笑を浴びせた。エディソンの電球のアイデアを聞いて、彼らは抱腹絶倒した。はるかに時代の先を行く輝かしい着想は、つねにそんな仕打ちを受ける運命なのである。
(『蒸気駆動の少年』「神々の宇宙靴──考古学はくつがえされた」
スラデック 柳下毅一郎 編 浅倉久志 訳)
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Tail-Lagoon @ 19:12
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2009/07/18(土)
例えば、僕は灰色の背広の上下に黒い腕章をつけて、喪に服したっていい。僕が通りを歩いて行くと、人々は僕が誰か家族の一人を、誰か近しい者、親戚か母親を失くしたのだと思うだろう。僕はあらゆる埋葬について行き、儀式が終ると、僕の手を握る人たちがあり、また、声を落してお悔みの文句を呟きながら、僕に接吻する人たちがあるだろう。こうして、僕の最大の関心事は新聞の死亡通知欄を読むことになるだろう。僕はあらゆる葬式に、盛大なのにも貧しいのにも、参列するのだ。そして僕は少しずつ埋葬生活に慣れて行く。僕はどんな文句を言ったら良いのかを覚え、眼を伏せたりごく静かに歩いたりするやり方を覚えることだろう。
僕は好んで墓地に出かけ、喜んで死者たちの額に触れるだろう。蒼ざめて張りを失った眼、空ろな顎に。平らな大理石に。そして葬いの花環の中心の、石膏の菫にからみ合うリボンの上に書かれたことを読むのだ。
(『調書』ル・クレジオ 豊崎光一 訳)
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Tail-Lagoon @ 01:56
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2009/03/03(火)
「問題の要点は、現場に居合わせた一人一人がみんな、この話は作り話だと知っていながら、しかも、それを否定していない、ということだ。今となってはもうとり返しがつかん。この話は嘘だと知っている連中が黙って見ているあいだに、そのまったくの嘘っぱちが伝説になるまでにふくれ上がってしまったんだ」
「そうですね。じつに面白い、じつに。歴史はこうして作られるんですね」
「そうだ。歴史はね」(『時の娘』 ジョセフィン・テイ 小泉喜美子 訳)
歴史は、それを記述させた誰か(大概において記述した誰かではなく)にとって都合の良い記録。
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Tail-Lagoon @ 00:00
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2008/11/10(月)
例えばピンセットで、あなたを構成する原子を一個ずつむしり取っていったら、あなたの前には、一度も生きたことがないのにかつてはあなたの一部だった原子の塵の山ができるだろう。
(『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン 楡井浩一 訳)
還元主義に対する疑問。
塵の山から原子を、またひとつずつ組み合わせていったら、もとのあなたに戻るのだろうか。また、戻ったとして、いったい組み立て作業のどの時点から、あなたはあなたの意識を取り戻すのだろうか。
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Tail-Lagoon @ 08:15
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2008/07/07(月)
理性の忌避と不信にもやはりアル・ガザーリー(1111年没)という理論家がいた。彼は、人間の行う推論によっては神学上のもろもろの真理を発見するのは不可能だということを、アリストテレス論理学を用いて論証した。彼の著『哲学の破壊』は、その題名が示すように、真理に達する道としての論理の価値をはっきり否定するものであった。
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Tail-Lagoon @ 10:34
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2008/06/05(木)
神々の性質および、神々間または神々と人間との関係に関する基本的な過程を容認するならば、この神学体系はそれ自体すべてのことに説明を与える。おこる可能性があるすべての事象に関する出来合いの説明が用意されている。予兆や予告がある災害を告げて、それがおこらなかったならば、神官たちのとった予防措置が効果を発揮した、ということになる。またもし災害が予告なしに訪れたとしたら、それは神が人間にあらかじめ知らせまいとしたからである。
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Tail-Lagoon @ 11:00
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ときおり、ここにはだれが住んでたっておなじだという気がすることがある。中が散らかってるという意味じゃない。おれはいくらかロボット的だが熟練したハウスキーパーだから、ポスターの額のてっぺんやなにかまできちんと埃をはらうことを忘れない。だが、ときおり、この部屋と、基本的消費財の基本的集積を見て、軽いさむけを感じる。つまり、べつに猫とか、鉢植えとか、なんだかんだをそこに置きたいってわけじゃないが、ここに住んでる人間はだれだっていいし、こんな品物を持ってる人間もだれだっていい、というような気になる瞬間がある。おれの人生ときみの人生、おれの人生とだれかの人生、なにもかもが互換可能だ、と。
(『クローム襲撃』「冬のマーケット」ウィリアム・ギブスン 浅倉久志 訳)
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Tail-Lagoon @ 10:36
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