2009/01/25(日)
ある日神様はひとつの宇宙を創造した。宇宙は何もかも完璧だった。その宇宙には、やがて神の姿に似た知性体が出現する予定だった。
神様が見守っていると、思惑通り知性体が出現した。神はその知性体をアルファと名づけた。
アルファは増殖し、繁栄し、文明を発展させ、やがて驚くべきことに(といっても神様は全知全能ゆえ、最初からそうなることを見越していたので、本当は驚きはしなかったが)神の真似事をし始めた。つまりアルファは、実験室の中で自らも宇宙を創造したのである。
神様はその様子を黙って見守り続けた。
アルファが創造した宇宙の中でも、やはりアルファに似た知性体が生まれた。ベータと名付けられたその知性体は、アルファより幾分か劣る種族であったが、それでも実験室の宇宙の中で繁栄し、増殖し、文明を発展させ、そしてアルファの真似をして、自らの実験室において宇宙を創造した。もちろん、神様が直接創造したアルファ宇宙とは比ぶべくもなく見劣りする宇宙ではあったが、そこでもやはりベータに似せた知性体が生み出され、これはガンマと名付けられた。
このようにして、次々と宇宙が創造され、知性体が生み出された。
そして……
オメガは、プサイによく似ていたが、しかしその不完全さときたら、まったくもってアルファとは似ても似つかない生き物だった。傲慢で欲深く攻撃的で不安定だった。
神様はオメガの姿や行いを見てひそかに嘆いた。なぜなら、この醜い生き物は神自身の創造物ではないとはいえ、間接的にはやはり神の創造物であることは確かだったから。あまりにひどい出来だったので、全能なる神様はその権限において、この不細工な宇宙とオメガをすぐさま消し去ってしまおうかとも考えた。
しかし神様はそうはしなかった。
神様は全知ゆえに、放っておいても、いずれオメガが勝手に自滅してしまうことをご存知だったのである。
Tail-Lagoon @ 00:19
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2008/07/11(金)
地球がまだ平らだった頃の話。
太陽は毎朝東方で誕生し、天を半周すると、夕刻には西方で死を迎えた。生死は、人や獣のみならず、星や月や太陽などの天体でさえも、逃れられない掟であった。
魂は移り変わり、生まれ変わる。霊は──人の霊も、精霊も──移り変わり、生まれ変わる。大地、海、空、森羅万象いっさいは流転し回帰する。永遠の大車輪。
神話は、歴史として繰り返され再現される儀式や演劇である。
人間たちは考えた。この逃れられない掟は、いつどのようにして始まったのだろうかと。
深きところより姿を現す得体の知れぬものども──「光あれ」闇の中から光が生まれた。闇を母胎として最初に生まれ出たものが光である。しかしそのためには「光あれ」という言葉が必要であったという理由から、「初めに言葉ありき」と主張するロゴス至上主義者たちもいる。言葉以前の世界を彼等は想像できないのだ。
しかし、神話は言葉だが、最初の神話はきっと言葉ではなく、沈黙であったろう。狂気を満たした沈黙。
そして現代では地球は球となり、神話は沈黙を強いられている。沈黙を強いられた狂気。
Tail-Lagoon @ 00:07
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2006/09/24(日)
地球表面の7割は海だ。それに最近は土壌の塩化も進んでいる。つまり地球というのはかなりしょっぱい惑星なのだ。
酒のつまみにはもってこいの塩加減なので、実際、超巨人族のイカデカバ神は、一杯やりながらこの星をしゃぶるのが大好きだ。ちょうど日本人が好んで梅干しをしゃぶるようなものだ。
時々、雲もないのに雨が降ってくることがあるが、あれは実はイカデカバ神の唾液なのである。
※イカデカバ神は、イナエリア族の酒神であり、ディオニュソスの遠い子孫にあたるとされている。
Tail-Lagoon @ 19:47
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1999/06/16(水)
歩き疲れて逆立ちをする男。汗が滝になって彼の真下の影へと流れ落ち、影から海が生まれた。海は拡がってついに男を呑み込み、渦を巻き荒れ狂う。海底がひび割れマグマが吹き出し島が作られた。島は長い年月を経て緑を蓄え獣たちを生み出した。やがて岸辺に一艘の船が流れ着き、襤褸を纏った男が上陸した。男はあるものを探し求めて島中彷徨い歩くのだが、ついに疲れ切って逆立ちをしてしまう。男の汗は大洪水を起こし、島は一夜にして海に沈んでしまった。島を失ったあとも島は、何事もなかったように夜明けを迎え、薄明の中、男が乗ってきた船だけが所在なく水面を漂っていた。それを天上から見下ろしていた女が泣き、涙は豪雨となって海を襲った。水はますます増え続け、惑星の直径を元の倍の大きさにし、臨界を越えた後、自重によって圧縮されていった。そしてできあがったのはぶよぶよした奇妙なゼリーの塊。美味しそう。女は大きな口を開け、ゼリー状の星の塊を一口でたいらげてしまった。嚥下する瞬間、白い喉が妖しく波打ちうねった。惑星は女の消化管の蛇のような迷宮のどこかで消滅してしまった。今は魂のみとなった男はそれを眺めて、もう逆立ちしなくてもいいことに安堵の溜息をもらした。そして永訣の眠りに就く直前の寂しさに囚われて、失ったはずの目を閉じた。女が逆立ちして笑っていた。それとも、魂のみとなってしまった男はまだ逆立ちしているので女が逆さまに見えるのだろうか、それはわからない。だが、それはもう昨日の話。やがて今日が終わり、明日には月が再び男を産むだろう。世界が逆立ちを望む限り、それは決して終わらない。
Tail-Lagoon @ 01:39
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