2008 7月の記事

沈黙の神話 »

 地球がまだ平らだった頃の話。
 太陽は毎朝東方で誕生し、天を半周すると、夕刻には西方で死を迎えた。生死は、人や獣のみならず、星や月や太陽などの天体でさえも、逃れられない掟であった。
 魂は移り変わり、生まれ変わる。霊は──人の霊も、精霊も──移り変わり、生まれ変わる。大地、海、空、森羅万象いっさいは流転し回帰する。永遠の大車輪。
 神話は、歴史として繰り返され再現される儀式や演劇である。
 人間たちは考えた。この逃れられない掟は、いつどのようにして始まったのだろうかと。
 深きところより姿を現す得体の知れぬものども──「光あれ」闇の中から光が生まれた。闇を母胎として最初に生まれ出たものが光である。しかしそのためには「光あれ」という言葉が必要であったという理由から、「初めに言葉ありき」と主張するロゴス至上主義者たちもいる。言葉以前の世界を彼等は想像できないのだ。
 しかし、神話は言葉だが、最初の神話はきっと言葉ではなく、沈黙であったろう。狂気を満たした沈黙。
 そして現代では地球は球となり、神話は沈黙を強いられている。沈黙を強いられた狂気。

Tail-Lagoon @ 00:07   |   PageUp