2006/06/07(水)

最近、ルドンの蜘蛛の子を部屋の中で放し飼いにしている。細く長い十本の足を持つ人面の蟲は、いつも底の知れないにやにや笑いをしているのだが、それは生まれつきそういう表情なのであって、特に意味はないのだ。とにかく落ち着きなく、やたら壁や天井を這い回っては幸福そうにしている。ただ、ぼくが夜眠ろうとする時など、真っ暗な部屋の中をかさこそと動き回る音が気になって眠れないことがある。そのせいで不眠症気味になってしまった。そこでつい先日、ぼくは一計を案じて、蜘蛛の子にホフマンの砂男の話を聞かせてやった。さっさと眠らないと、きみのその自慢の真ん丸目玉を、砂男がえぐり出しにやってくるぞ、だからぼくが眠る時は、きみもその目をしっかり閉じて、静かにしなければいけないよ、と。いったいぼくの話を理解したものかどうか、この数日間は、ぼくが就寝しようとすると大人しくしてくれるようにはなった。ただ、ぼくが完全に熟睡した頃を見計らってから、再び動き回っているようなのだが。今朝起きたときは、蜘蛛の子はぼくの顔に乗って、その細長い足でぼくの目を今にも突き刺そうとしているところだった。危ないところだった。どうやら彼のつたない理解力のために、ホフマンの話は彼をして、自分が砂男だと思い込ませてしまったらしい。全く困ったものだ。どうやってこの誤解を解いたらいいものか。眠っている間に、眼球をほじくり出されてはたまらない。これでまた不眠の夜が続くことになるのだろう。
Tail-Lagoon @ 00:00
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