2005 11月の記事

唐揚げ »

 あまりに蛙どもがうるさいので、投網を打ってすべて捕えた。一網打尽。数えたら全部で205匹もいた。特に肥えたのを50匹ばかり選り分けて、残りは窓から逃がしてやった。13階の窓からだから、地面に墜落した蛙が無事かどうかはわからない。もし地上で大量の潰れた死骸に出くわしたら厭なので、暫く窓側の道は通らないことにしようと決めた。さて、選ばれし50匹ほどの蛙どもは、丁寧に皮をはいで唐揚げにした。蛙料理は素人だから、若干臭みが残ったが、そこそこいける。しかし流石に全部は食い切れなかったので、同じ階の住人達に配って回った。蛙なんて言ったら誰も貰ってくれない気がしたので、鶏の唐揚げと偽って、各戸に5・6匹ずつおすそわけ。こうやって恩を売っておけば、次の各階委員(要するに雑用係)選出の際は、うまく切り抜けられるだろう。蛙どものせいでこの数日間不眠に悩まされてきたが、最期にはこうして役に立ってくれたので、許してやることにした。これで今夜からはぐっすり眠れるだろう。

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蛙 »

 今夜は何百匹、何千匹という蛙の鳴き声が、部屋に響き渡っていた。美しくもなく、楽しくもなく、ぐぇぐぇぐゎぐゎと果てしのないダミ声の大合唱に、俺はかなり気分が滅入ってしまった。ベッドの下、天井の裏、キッチンの吊戸棚、冷蔵庫や壁の中、テレビからも、鞄からも、部屋中いたるところで奴等が頬っぺただの腹だの目玉だのを風船ガムのように膨らましては鳴き騒いでいた。だが、そんなただやかましいだけの蛙の鳴き声が、聞き慣れてくると、なぜかとても物悲しく思えてくるのはいったいどうしたわけだろう。そうだ、俺は思いだした、あれはまだ戦争などない時代のことだった、あれはまだヒトなど存在していない時代だった、俺はたった一人洞窟の中にいて、闇に蹲っていたっけか。洞窟の中はその夜じゅう、反響で小刻みに震えていたっけか。巨大な洞は天然の楽器となって、地響きのような底深い音を辺りに撒散らしていたよなあ。月も星も火も、この世の明るい物はすべて、その騒音に耐えかねて逃げ出し、洞窟の内も外も変わらぬ真の闇に包まれて、いつしか俺までも蛙の仲間になって夜通しぐぇぐぇぐゎぐゎと歌い続けていたんだった。そうだ、あの朝日が差し込むまで、絶え間なく無我夢中で啼き続けたのだ。そうだ、もしあの太陽が昇らなかったら、俺はきっとそのまま蛙になってしまっていたに違いない。もしそうなっていたら、今この世には人間など一人も生まれていなかったろうに。

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