2005/11/05(土)
今夜は何百匹、何千匹という蛙の鳴き声が、部屋に響き渡っていた。美しくもなく、楽しくもなく、ぐぇぐぇぐゎぐゎと果てしのないダミ声の大合唱に、俺はかなり気分が滅入ってしまった。ベッドの下、天井の裏、キッチンの吊戸棚、冷蔵庫や壁の中、テレビからも、鞄からも、部屋中いたるところで奴等が頬っぺただの腹だの目玉だのを風船ガムのように膨らましては鳴き騒いでいた。だが、そんなただやかましいだけの蛙の鳴き声が、聞き慣れてくると、なぜかとても物悲しく思えてくるのはいったいどうしたわけだろう。そうだ、俺は思いだした、あれはまだ戦争などない時代のことだった、あれはまだヒトなど存在していない時代だった、俺はたった一人洞窟の中にいて、闇に蹲っていたっけか。洞窟の中はその夜じゅう、反響で小刻みに震えていたっけか。巨大な洞は天然の楽器となって、地響きのような底深い音を辺りに撒散らしていたよなあ。月も星も火も、この世の明るい物はすべて、その騒音に耐えかねて逃げ出し、洞窟の内も外も変わらぬ真の闇に包まれて、いつしか俺までも蛙の仲間になって夜通しぐぇぐぇぐゎぐゎと歌い続けていたんだった。そうだ、あの朝日が差し込むまで、絶え間なく無我夢中で啼き続けたのだ。そうだ、もしあの太陽が昇らなかったら、俺はきっとそのまま蛙になってしまっていたに違いない。もしそうなっていたら、今この世には人間など一人も生まれていなかったろうに。
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Tail-Lagoon @ 00:00
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